出生前診断を受けたくないと考えている人を説得する方法
出生前診断とは、赤ちゃんが生まれてくる前に先天性の異常や障害の有無を調べる検査です。血液検査などで簡単に分かるものから、おなかに針を刺して羊水を調べるものまで様々な検査があります。
まずは検査を受けるか否か、受けるのならどの検査にするのか、夫婦で話し合う必要があります。
出生前診断の件数は東京がダントツで多い
羊水検査などの出生前診断を行っている病院を検索してみると、他の都道府県は10件未満がほとんどで多くても神奈川県の40件が2位であるのに対し、1位の東京は74件も取り扱いがあるようです。それに対して地方では、県内に1件しか取り扱い病院がないことも珍しくありません。中には検査のためにわざわざ東京まで出向く人もいます。
そこまでして検査を行いたい人もいる一方で、受けたくない人も一定数いるようです。受けるか受けないか、夫婦で意見が一致している場合は問題ありません。
しかし厄介なのは意見が割れた時です。
まず「受けたくない」という人を説得したいと思っているあなたは「受けた方がいい」と思っているということです。では、なぜあなたは「受けた方がいい」と思うのでしょうか。
一般的に2つの理由が多いようです。1つは「障害があるなら中絶したほうが良いから」、もしくは「障害がある状態で産むのであれば、生まれる前に色々な準備が出来るから」です。
事前の準備をしたいから診断を受けたい場合
この場合の説得の方法は比較的簡単です。まず障害の種類がわかることで、どんな医療が受けられるのか、自宅をリフォームしておく必要があるのか、費用面のことなどの準備がかなりスムーズになります。
自分たちの両親、つまり赤ちゃんにとっての祖父母に事情を話し、協力を頼んでおくこともできます。たとえ健康な赤ちゃんであったとしても、出産直後は時間的にも体力的にも心理的にも、まったく余裕がなくなります。まして障害のある子供を持ちながらこのようなことを進めるのは大変でしょう。
つまり「障害の有無に関わらず産みましょう、でも準備をしておくために検査は必要だよね」という理論です。どんな検査を受けて、どのような障害がわかるのか、それに対してどのように対策を講じるのかを理論的にプレゼンしましょう。
出産のための準備の一環であることを強調すれば「命の選別をするなんて」という考えの人もこの理由なら了承してくれるのではないでしょうか。
障害が分かったら中絶をしたい場合
これに対し前者の場合、つまり自身が「障害があったら中絶する」という考えの場合、説得は困難になります。どちらが正しいかは別にして、中絶に抵抗がある人は少なくないからです。法律的には中絶が可能なのは22週までです。
では22週より前であれば、胎児は人ではないのでしょうか。法的にそうであったとしても、特に母親はそんなに簡単に割り切れるものではありません。たとえ1cmにも満たない胎児だとしても、大切な我が子です。
そんな我が子を障害があるからと簡単に殺せるわけはない、なら受けても受けなくても一緒だから受けたくない。という考えは至極当然です。まずはその気持ちを肯定してあげましょう。次に絶対にやってはいけないのが、後者のように「障害があった時の準備のためだ」と、いわば嘘をついて検査を受けさせることです。
これで検査を受けさせてもし障害が発覚すれば、中絶するかしないかで口論になります。嘘をついたあなたは信頼を失うでしょう。この場合は、なぜ中絶したほうが良いと感じるのか、その理由を真摯に話すしかありません。
ちなみに出生前診断により中絶を決意した理由には「苦しい思いをさせるだけだから」「上の子に迷惑が掛かってしまう」「産まないことが優しさとなる場合もある」などが多いようです。
世の中にはどちらが正しくどちらが間違っているのか区別がつかないことがたくさんあります。出生前診断もその1つです。
診断を受けずに産んだ人、受けた上で障害を受け入れて産んだ人、中絶した人、その誰もにそれぞれの考えがあり誰一人間違ってはいません。ただ大切なのは、夫婦でよく考え話し合うことです。その上での決断であれば、それがその夫婦にとっての正解です。